霧の香勾引ふ - 三澤秋 (Aki Misawa)
霞んだ道の上境界は揺らめき
紫色の霧が包んだ
迷い子の足跡また一つ隠して
含み笑いが何処から聞こえる
行き場を失い名前も
記憶も無くして
手探り彷徨う
マヨヒガへの道はすぐそこに
今すぐ差し伸べる手を
取りここにおいで
帰る場所など
もう忘れたでしょう?
甘く優しい夢を見せてあげる
生命ある限りに踊る宴
咲き乱れる華の遅すぎた春色
花びら千切る指が誘う
迷宮の出口はどこにも見つからず
含み笑いが何処から聞こえる
色づく桜と手招く闇の向こうには
まだ見ぬ楽園
安らぎに抱かれて朽ち果てる
今すぐ仮初めの優しい腕の中へ
帰る場所など
もう忘れたでしょう?
永遠に続く夢を見せてあげる
生命ある限りに踊る宴